参考書を買った帰り道は、
少しだけ気分が軽かった。
まだ何も始まっていないのに、
もう一歩進んだような、
そんな錯覚があった。
袋の中には、
新しい参考書。
表紙はきれいで、
ページもまだ硬い。
これから、
ちゃんと勉強する予定だった。
いつから始めるか、
どれくらい続けるか、
そんなことを、
歩きながら考えていた。
家に帰ったら、
机を片付けて、
最初のページを開くつもりだった。
その時点では、
やる気は、
ちゃんとあった。
参考書を持っているだけで、
少し賢くなった気もした。
でも、
家に着いて、
袋を置いて、
少し休憩して。
気づいたら、
その日は終わっていた。
今なら、
AIに聞けば、
同じ内容を、
もっと早く知ることができる。
それでも、
あの帰り道の感じは、
たぶん、
今も変わらない。
何かを始める前の、
一番きれいな期待。
失敗も、
挫折も、
まだ存在しない時間。
参考書を買った帰り道は、
勉強そのものより、
ずっと前にある。
それでも、
あの一瞬があったから、
始めようと思えた。
今日も本棚には、
開かれていない参考書が並んでいる。
でも、
あの帰り道だけは、
今でも、
ちゃんと覚えている。
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