2026年2月8日日曜日

最後まで読まなかった参考書

本棚に、
最後まで読まなかった参考書がある。

表紙は少しだけ古くて、
角が少し曲がっている。

最初の章には、
線が引いてあって、
ところどころに、
小さなメモも残っている。

読もうとしていたのは、
間違いない。

でも、
途中で止まっている。

だんだん文字が多くなって、
説明も細かくなって、
ページをめくる手が、
自然と遅くなる。

わからないところを、
何度か読み返して、
それでも頭に入らなくて、
そのまま閉じた。

今なら、
その場で調べれば、
もっと簡単な説明が見つかる。

AIに聞けば、
要点だけを、
すぐに教えてくれる。

最後まで読まなくても、
目的は、
だいたい達成できる。

便利になったな、と思う。
それは正直な気持ちだ。

でも、
最後まで読まなかった参考書には、
途中で投げ出した、
自分の時間が挟まっている。

理解できなかった時間、
考え込んだ時間、
眠くなって、
ページを閉じた夜。

内容は、
今ではもう、
ほとんど覚えていない。

それでも、
あの本を開いていた時間だけは、
なぜか、
はっきり思い出せる。

最後まで読まなかったことは、
失敗でもなく、
成功でもない。

ただ、
勉強していた途中で、
立ち止まった、
その記録だ。

今日もその参考書は、
本棚の同じ場所にあって、
続きを読む気配もなく、
静かにそこにいる。

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